第二十五回/長崎市公会堂
長崎市にある長崎市公会堂。その建物の造形の素晴らしさを中心に紹介します。

 


開館(落成)当時の長崎市公会堂(1962年)

長崎市公会堂の完成
開館は1962(昭和37)年6月2日。前回取上げた旧長崎県立美術博物館と同様に長崎国際文化センター建設事業の一環として建てられました。長崎を代表するホールとして、数々のコンサート・舞台・講演会などが行われています。
1977(昭和52)年〜1991(平成3)年の間、毎年8月には各県各系列局からの代表選出による新人歌手コンテスト「長崎歌謡祭」(NBC長崎放送主催)も開催されていました。本田美奈子さん、夏川りみさんらがこの歌謡祭でグランプリを獲得し、メジャーデビューしました。
また、公会堂前の広場は、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」(毎年10月7日〜9日開催)の踊りの観覧場のひとつとしてスタンド席が組まれ、踊町の演し物が披露されています。
(スタンド席は毎年お盆過ぎから準備にとりかかっています。)
 
長崎国際文化センター 建設事業とは
 被爆から10年を迎えるにあたって文化興隆による恒久の平和を確立しよう
 と発案された文化施設建設計画の総称です。
 1959(昭和34)年の長崎水族館の完成に始まり、長崎県立美術博物館の
 完成でこの建設計画は完了しました。
 

 
1962年以前にも公会堂があった証
長崎市公会堂は現在のものが最初ではありません。昭和5年、古賀重太郎氏が袋町(現 栄町)のキリスト教青年会館とその敷地をともに買収し改装費を添えて市に寄贈しました。これによって長崎で初めての公会堂が落成しました。
昭和20年の原爆投下の二次火災により、当時の公会堂の姿はなくなってしまいましたが、その栄誉を称え、同氏の銅像が今も入り口正面に設置されています。
現存する資料が少なく、その後、今日の長崎市公会堂の完成(1962年)に至るまでの経緯は明らかではありません。


古賀重太郎氏の銅像

 

 


現在の長崎市公会堂

特徴のある建物
設計は長崎市出身の武基雄氏(早稲田大学教授)。公会堂の他にも、長崎国際文化センター事業では長崎水族館(現 長崎総合科学大学)も手掛けられました。
上記、開館当時の写真と比べてみてもわかるように、その姿は51年経った今もほとんど変わっていません。
建物は正面から観ると屋根から途中階の梁の部分、縦に伸びる柱と壁を共有する部分が『鳥居』をイメージしたとされる斬新な表情をみせています。
シンメトリー(左右対称)と思われがちですが、正面向かって左には青いタイルを施し、正面階段も右側が広く入口も真正面ではありません。
多彩で創意工夫に富んだデザインが認められ、建物は「日本におけるDOCOMOMO150選(No.70)」に選ばれています。


日本におけるDOCOMOMO150選 関連(説明)リンクはコチラ

 

 
外観側面も大胆なデザイン
近年、端正でシンプルなデザインの建物が多い中、長崎市公会堂の外観は力強く、複雑な構造が魅力的です。彫りの深い造形は、一見、奇抜なようにも見えますが、実はフロアやホールを仕切っていたり、強度が保たれている等、合理的とされています。
正面から観ると横の二段目の梁を思わせる部分も柱はなく浮いているように見せるという、大胆なデザインです。
こういうところに画一的ではない、多彩な表情をみることができます。

外観側面の瓦が並んでいるようなルーバー(目隠し、遮光の為にとりつけられる羽板のこと)は開館当時のコンクリート製から鋼板製に変わっていますが、外側からのみならず、階段のある内側にも船と波が模られ(右の写真@参照)、見えないところの装飾、デザインにも目を見張るものがあります。

   
内観にも素晴らしい装飾が
正面左の木製のカウンターは、重厚感をただよわせながら、みごとな曲線を描いています。その他、階段の手すり、丸くて無駄のないシャンデリアなど、外観のみならず、そのモダニズム建築(近代主義建築)を継承していたとされる武氏のデザインは内観、内装にも随所に 施されており、どれをとっても建築ファンを唸らせるものばかりです。

   
オランダ刺繍の緞帳
NBC長崎放送から寄贈されたポルトガル船出入港の様子が描かれた豪華な緞帳(どんちょう) も開館当時から残るもののひとつです。サイズは縦9.5メートル、横20メートルで、制作費は1962年当時845万円。
安土桃山時代・江戸時代の絵師、狩野内膳(かのうないぜん)が描いた南蛮屏風(なんばんびょうぶ)をもとに京都の専門店がオランダ刺繍(ししゅう)を施しました。開館から51年も経つ現在でもその風情は見事です。


開館当時の緞帳

   
※今回で長崎今昔は終わります。ご愛読ありがとうございました。
 

 


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長崎市公会堂 交通アクセス
路面電車 長崎駅前から三番系統蛍茶屋行、公会堂前下車(約5分)
自動車 高速道路(長崎多良見IC)より
 ○長崎バイパス
  長崎多良見 → (県庁・長崎方面 長崎バイパス) → 川平料金所
  → (西山バイパス)→ 馬町 → 公会堂(約20分)
 ○長崎IC・出島道路
  長崎IC → 芒塚IC → 長崎IC → (出島道路) → 出島 → 公会堂
  (約20分)
 ※駐車場のご案内
  公会堂には一般用の駐車場がございません。
  公共交通機関をご利用いただくか、お近くの有料駐車場をご利用
  下さい。
 
営業時間: 9:00〜22:00
定休日: 12/29-1/3
〒850-0874 長崎市魚の町4−30 TEL095-822-4145
 
 
長崎市公会堂のホームページです
 

写真提供・取材協力: 長崎市公会堂

 

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